カウンセリングを、セラピーやケアと同義に考える方もいらっしゃるかと思いますが、
わたしの場合は「理解」がその真髄であると位置づけています。
他者からの深い理解が、それ自体で人を癒し、励まし、成長させる力を持っていることは、
産業、教育での臨床経験でも常に実感するところです。
※「理解」がなくても、人間力や魅力的な技術・サービスを提供することで、人を癒したり、励ましたり、成長をさせる人もいます。
いわゆるカウンセラー、コンサルタント、コーチ、セラピスト、隣接領域の職業でもいらっしゃいますし、素晴らしいなぁ、素敵だなぁと感じる人もいます。
つまり「理解」は、すべてではありません。
でも、自分を迷える人間として考えたら、わたしには「理解」がとても大切です。
自分を理解してくれる人を信頼しますし、
一体何が問題なのか? 自分のとらえ方を共有してくれる人と話したいです。
聴くチカラをシンプルに定義づけるなら、
耳で聴いた言葉を礎にした「理解力」であり、その理解を相手に届くように伝える力です。
具体的には、「理解」は大きく3つに分けて考えることができます。
・主題=何について話しているのか
・話し手の内面世界=話し手はどういう価値観で、どう捉え、どう感じているのか
・問題の本質=何と何が不一致を起こしているのか
語られる言葉を媒介にして徐々にはっきりさせ、
その理解を共有していく過程で、
話し手は聴き手を信頼し、安心して自分の内面に向き合い、新たな気づきを得て、迷いを晴らして次の行動を決めることができるのです。
これが、他者からの理解をきっかけにした問題解決の促進です。
「話し手が、自分の力を思い出し、信じて自立するプロセス」
と表現することもできるでしょう。
この視点に立つと、聴き手には理解力の前提として
「相手の力や成長を信じる力」が必要であることがわかるかと思います。
聴き手が前に出すぎたり、話の内容に巻き込まれて一緒にネガティブになると
相手の力を信じるというスタンスに立てなくなるので
鏡としてまっすぐに話し手を映すことが難しく、
結果として「話してスッキリした」とはならず、
もちろん課題の解決や成長も起こりづらくなるのですね。
この「聴く側の姿勢・在り方」については今後もたびたび触れることになる予定です。
さて、理解力のベースになる耳からの情報処理には、一定の訓練は有効ですが、
特別な技術ではなく、日常の心がけでも上げていくことはできます。
単純に、ニュースでもドラマでもバラエティでもいいですが、
一定量の情報、まずはA4用紙一行くらい(50文字程度)からをめどに、
きいてすぐに正確に繰り返せるかどうか、試してみると良いでしょう。
どれだけ集中すれば可能かの目安にはなると思います。
当然、テレビはわかりやすい情報で構成されていますので、
あくまでも一つの目安、そして「聴く」ことへの集中を鍛えるちょっとした練習です。
その後は、お友達や家族の話を聴く際に、ある程度以上の量を聴いて、
「今の話は、こういうこと?」と要点をまとめて確認させてもらう、という試みも良いと思います。
オンライントレーニングを目的に応じて使っていただくこともできますので、
興味があればこちらもどうぞ。
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