聴くチカラレベル3

200時間から250時間のケースやトレーニング時間を重ねて身につく
聴くチカラのレベル3は、
ズバリ、「見立て」ができるレベルです。

カウンセリングは医療行為ではないので、
「診断」にあたることはしません。
あなたはうつ病のようですね、なんて言ったら、
重大な倫理違反を行っていることになり、
資格剥奪もののペナルティです。

診断はしませんが、
クライアントがどんなパーソナリティ・発達・気質の傾向をもっており、
それらを背景にどんな困り感を感じているかを理解して、
援助の方向性を検討することは常に行っています。
これが見立て。

実際には、見立ては幅広い意味で使われていますが、
心理カウンセラーとして就職ができるレベルと考えると
「心理的問題=不一致」と考えた時に、
何と何が一致していず、葛藤を起こしているのかを
CLの話の本質にフォーカスして構造的に理解・共有できること、
とここでは定義したいと思います。

悩みとは不一致。
と、ロジャーズは言いました。

気分が晴れない。
もやもやがある。
なんかわかんないけど、次の行動ができない、わからない。
とっても大雑把にいうと、
こんな状態でクライアントが目の前に現れることが多いのですね。

あるいは、
「腹が立つ隣人がいる」
「向いていないから会社を辞めようか」
「弟夫婦と死ぬほど仲が悪い」
などの、 現象面のお悩みを相談するためにおいでいただきます。
こっちの方が多いかな。

こんな時、クライアントが困っているのは状況に対してなんですが、
その状況に対してアドバイスをしても、何の解決にもなりません。
見立てとは、この困った状況が、
クライアントの内面で何らかの心理的な要因、
たとえば「感情(強い不安)と思考(でもこうすべき)」が
不一致を起こしているために生じていそうだな、

と仮説を立て、
クライアントに少しずつフィードバックを行いながら、

「心理的問題」の共通理解を進めていくこと。

不一致にはいくつかの種類があります。
名人ロジャーズが言ってたのは、
「経験」と「自己概念」の不一致。
「俺はできる男だ(自己概念)」と思っているのに、
「人からひどい評価を受けている(経験)」など。
こんな時も、健全な自己受容ができなくなって、人は悩んだりするのですね。

発達課題との関係もあります。
たとえば思春期、
親に反発をすることで親を乗り越えるのが健全なわけですが、
大人になってもまだ親を乗り越えられない、 という状態であれば、
クリアしそびれた発達課題を残している、と見立てます。

ただカウンセラーが勝手に心で決めつけたり、

分析していてももちろん意味がなく、
クライアントにとって重要な「話の本質」に向かってフォーカスした結果、
何と何が不一致を起こしていたのかを、
はっきりと言語化・共有することで、
クライアントが内面の心理的問題を認識し、
自己理解を深め、解決への一歩を踏み出せるのです。

カウンセラーとして受容的に、
正確に話を聴くことができるようになった後、
ぶつかるのは見立ての壁です。
見立てができないと、 だいたい、
20分くらい話を聴いた時点で話が一周まわって堂々巡りをし始めます。

話は理解したはずなのに、 なぜ本当の問題にたどり着けないのか、
最初は理解できません。

応答によって意図的に、
問題を構造化・共有できるようになるまでには、
だいたいケース数で200から250くらいは実践を積んでいる人が多いです。
またここまで出来るようになると、
クライアントを傷つけるような応答をしないことはもちろん、
どんなネガティブな話を聴いても、
カウンセラーが引きずられて一緒に落ち込むということは
ほぼなくなっているという意味で、

リスクマネジメントもできていることが多いです。

ただ、同じケース数を積んでも、
無難な傾聴をしているだけだと、
解決力が上がっていかないということもありえます。

次回、さらにここから壁を越えていく段階について解説します。